転職に伴い、病院を退職しようと考えている方の中には「どのように退職の手続きを進めれば良いの?」と不安を感じている方もいるでしょう。
退職の手続きがスムーズに行われないと、新しい職場に転職することが難しくなります。
そのため、次の事項について事前に知っておく必要があります。
- 退職はどのような手順を踏めば良いか
- 退職の手続きはどんな点に注意すべきか
そこで本記事では、退職に伴う手続きと注意点についてご紹介します。
退職の流れは、看護師であってもそうではなくても、基本的には同じです。
一度知識として覚えておくと、今後同様の事態が起こっても、スムーズに対処することができます。
1. 退職時に返却するもの
退職するときに職場に返却しなければならないものは、次の3つです。
1-1. 健康保険証
医療機関を受診するときに必要な健康保険証ですが、退職すると社会保険の被保険者ではなくなるため、返却が必要です。
前職で交付された健康保険証は退職後に使うことができませんので、健康保険証を新たに発行してもらう必要があります。
すぐに新しい職場が決まれば健康保険証を発行してもらえますが、離職期間がある場合は次の3つのいずれかの手続きを行う必要があります。
- 自治体の国民健康保険に加入
- 現在交付されている健康保険証の任意継続
- 家族の健康保険の扶養になる
前職の退職日から現職の入職日までの期間のこと。例えば、前の会社を12月31日に退職し、2週間ほど転職活動をした後に現在の病院に4月1日に入職した場合は、離職期間は3ヶ月になります。
いずれの方法も、すぐに新しい健康保険証が発行されませんので、手続きの期間は無保険になります。

前職で交付された健康保険証は、①~③のどの手続きを選択したとしても、必ず返還する必要があります。
1-2. 通勤定期券
職場への通勤手段にもよりますが、公共交通機関を使っていた場合は通勤定期券を返却する必要があります。
電車やバスを使って通勤していた方の中には、「引き続き使えたらラッキー!」と思う方もいるかもしれません。
ただ、残期間が長い場合は返却や払い戻しをして返金しなければならないケースがほとんどです。

1年定期で11ヶ月が過ぎている場合は、返却不要と言われるかもしれません。
一方、6ヶ月定期で1ヶ月しか経過していない場合は、確実に返却を求められるでしょう。
会社ごとに規定が異なりますので、分からない場合は上司に確認してください。
1-3. 職場で支給された備品
職場から貸与されているパソコン、セキュリティキー、鍵など「備品」と呼ばれるものは、返却しなければなりません。
返却しないと後々トラブルになることもありますので、注意が必要です。
「病院から預かっているものは全て返却する」というくらいの意識でいると間違いないでしょう。
もし返却が必要か迷った場合は、上司に確認すると良いでしょう。
2. 退職時に受け取るもの
退職時に職場から受け取るものは、次の4つです。
- 雇用保険被保険者証
- 源泉徴収票
- 年金手帳
- 離職票
2-1. 雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入していたことを証明する書類です。
入職した時に返却されている場合もありますが、もし紛失してしまったらハローワークで再発行が可能です。
再発行の手続きには「雇用保険被保険者番号」と呼ばれる番号が必要ですので、会社に確認するようにしましょう。

「雇用保険被保険者番号」は離職票にも記載されていますので、ご確認ください。
2-2. 源泉徴収票
源泉徴収票は、1年間(1~12月まで)に支払われた給与や賞与などの総額と、納めた所得税が記載された書類です。
転職すると年末調整は転職先の病院で行われますので、前職から受け取った源泉徴収票は転職先へ必ず提出してください。
一方、退職してから年末までに再就職しなかった場合は、その年の所得税を自分で申告する必要があります。
これを「確定申告」といいます。

確定申告することで所得税が戻ることもありますので、忘れすに申告するようにしましょう。
2-3. 年金手帳
年金手帳とは、20歳以上の公的年金制度(国民年金、厚生年金、船員保険)の加入者に交付される手帳のことです。
会社が保有している場合がありますので、忘れずに受け取ってください。
失くしてしまった場合は、近くの年金事務所で再発行が可能です。
2-4. 離職票
離職票とは、離職したことを証明する書類で、退職前の賃金や退職理由などのが記載されています。
離職票には、前述のとおり「雇用保険被保険者番号」も記載されています。
離職票がないと失業手当の手続きができません。
離職して10日過ぎても離職票が届かないときは、前職の担当者に催促の連絡をしてください。
それでも届かない場合は、ハローワークから催促してもらうことも可能です。
3. 年金・健康保険・失業手当の手続きについて
退職したときは、年金、健康保険、失業手当の手続きが必要になります。
どのような状況で退職したのかによって手続きが異なるので、それぞれ知識として知っておいてください。
3-1. 離職期間がある+雇用保険加入期間12ヶ月未満
雇用保険の加入期間が12ヶ月未満の場合は、「年金」と「健康保険」を新たなものに切り替える必要があります。
失業手当は、雇用保険加入期間(在職期間)が短いため受け取る権利はありません。
3-2. 離職期間がある+雇用保険加入期間12ヶ月以上
雇用保険の加入期間が12ヶ月以上の場合も、「年金」と「健康保険」の切り替えが必要ですが、このケースでは「失業手当」を受給できる可能性があります。
離職票を受け取ったら早急に手続きを進めましょう。
「年金」の手続きはこちら
「健康保険」の手続きはこちら
「失業手当」の手続きはこちら
3-3. 離職期間がない(退職日の翌日に入職)
既に転職先が決まっており離職期間がない場合は、転職先があなたに代わって年金と健康保険の手続きを行ってくれますので、必要な書類を転職先に提出しましょう。
転職先に提出する必要がある書類は、次のとおりです。
4. 年金の切り替えについて
公的年金には大きく分けて第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者の3種類があります。
第2号被保険者、第3号被保険者でない人。0歳以上60歳未満の自営業者・農業者とその家族、学生、無職の人が該当。
厚生年金や共済の加入者であると同時に、国民年金の加入者である人。民間会社員や公務員の人が該当。
国民年金の加入者のうち、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者で、年収が130万円未満の人が該当。保険料をご自身で納付する必要はなく、保険料納付済期間として将来の年金額に反映されます。
日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の方で、厚生年金保険に加入していない方は、国民年金の第1号または第3号のいずれかの被保険者となります。
そのため、退職した場合は「第1号被保険者」または「第3号被保険者」への切り替えが必要となります。
それでは、1号被保険者と3号被保険者の違いや特徴を見てみましょう。
4-1. 第1号被保険者とは
区分 | 要件 |
手続きの期間 | 退職後14日以内 |
手続きの場所 | 市区町村の年金窓口 |
必要なもの | 年金手帳、印鑑、離職票など退職日のわかるもの |
病院を退職した方で、第3号被保険者(配偶者の扶養)に該当しない20歳以上60歳未満の方は、第1号被保険者に加入する必要があります。
手続きは、お住いの市区町村の年金窓口で、14日以内に行ってください。
1号被保険者は納める保険料は少ないため、厚生年金と比べて受け取れる年金額も少ないのが特徴です。
具体的には、満額で780,900円(2021年度時点)、月額に換算すると65,075円となります。
未納、免除、カラ期間があると、ここからさらに減額されます。

収入が少ないなど、保険料を納めることが困難な方向けに免除・猶予制度あります。
詳しくは国民年金機構HPをご参照ください。
4-2. 第3号被保険者とは
区分 | 要件 |
手続きの期間 | 退職後14日以内 |
手続きの場所 | 配偶者の勤務先 |
必要なもの | 年金手帳、印鑑、離職票など退職日のわかるもの |
厚生年金を収めている2号被保険者(会社員・公務員の配偶者)に扶養される20歳以上60歳未満の方は、その扶養に入ることが可能です。
第3号被保険者に関する手続きは、配偶者の勤務先で行う必要があります。
役所では手続きできませんので、ご注意ください。
第1号被保険者と同様に受け取れる年金は基礎年金部分のみになりますので、第2号被保険者(厚生年金)と比べて受給額は少なくなります。
なお、健康保険と違い、配偶者以外の家族の扶養に入ることができません。
そのため、配偶者がいない場合は必然的に1号被保険者となります。
5. 健康保険の切り替えについて
健康保険の切り替えのパターンは、次の3つとなります。
- 現在加入している健康保険を任意継続する
- 国民健康保険に加入する
- 家族の健康保険の扶養に入る
5-1. 現在の健康保険を任意継続する
区分 | 内容 |
手続きの期間 |
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保険料 |
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おすすめする方 |
|
主な特徴 |
|
退職前に健康保険の被保険者である期間が2ヶ月以上あった場合は、最大2年間まで任意継続することが可能です。
任意継続の手続きは、退職日の翌日から20日以内に行う必要があります。
これを過ぎると任意継続を利用できなくなりますので、ご注意ください。
任意継続しても、これまでと同じ保険給付及び保健事業を受けることができます。
任意継続を選択しない場合は国民健康保険に加入することになりますが、退職1年目は前年所得(現役時代の所得)で保険料を計算するため、任意継続の保険料よりも高くなる場合があります。
そのため、任意継続と国保のどちらの保険料が安いのか、試算してもらいましょう。
5-2. 市区町村の国民健康保険に加入する
区分 | 内容 |
手続きの期間 |
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手続きに必要なもの |
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保険料 |
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おすすめする方 |
|
主な特徴 |
|
国民健康保険は、市区町村が運営する健康保険です。
加入する場合は、住民票のある市区町村の国保窓口で、退職日の翌日から14日以内に手続きしてください。
世帯全員の保険料が世帯主に一括請求られるのも国保税(料)の特徴です。
仮に世帯主が国保に加入していなくても、納入義務者は世帯主になる(擬制世帯主)ことに注意が必要です。

擬制世帯主は国保税(料)の納税義務者になりますが、保険税(料)の計算の中には入りませんのでご安心ください。
5-3. 家族の扶養に入る
区分 | 内容 |
手続きの期間 |
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保険料 |
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おすすめする方 |
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加入の要件 |
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退職後すぐに転職をしないのであれば、家族(親や配偶者)の扶養に入ることもできます。
扶養に入る場合は、ご家族が加入する健康保険組合で手続きが必要ですので、速やかに申し出ましょう。
扶養に入る場合は、年収が130万円未満で、かつ同居の場合は被保険者の年収の1/2未満、別居の場合は被保険者からの仕送り額未満である必要があります。
6. 失業手当を受け取る条件と手順について
失業保険とは、失業した人が安定した生活を送りながら一日も早く再就職するために支給される手当のことで、正式には「雇用保険」といいます。
この章では、失業保険をもらうための条件と手続きの流れについてお伝えします。
6-1. 失業保険を受け取るための条件
失業手当を受け取るためには、次の2つの条件をいずれも満たす必要があります。
- いつでも就職できる能力があるが、就職業できない
- 退職日以前の2年間に雇用保険の加入期間が通算12ヶ月以上ある
そのため、次の方は①の条件により失業手当を受け取ることができません。
- 退職してすぐに就職する意思がない人
- 病気やケガ、妊娠・出産などですぐに就職するのができない人
6-2. 失業手当の受給までの流れ
失業手当は申請してすぐに受け取れるわけではありません。
ハローワークへの申請や説明会への参加など、所定の手続きを踏む必要があり、特別な事情のある方で1ヶ月、通常は2ヶ月程度かかります。
それでは、失業手当の申請から受け取るまでの流れを見ていきましょう。
- STEP1退職
離職票を受け取る
- STEP2ハローワークで手続きする
求職票に記入し、離職票とともに提出して面接を受ける
- STEP37日間待つ(待機期間)
自己都合や懲戒解雇による退職の場合は、待機期間満了の翌日から2ヶ月間は給付制限のため給付がありません。
- STEP4雇用保険受給者説明会に参加する
受給資格者のしおりに基づき、雇用保険の受給中の諸手続きや失業認定申告書の書き方、不正受給についての留意事項などの説明を受けます。
- STEP5失業認定を受ける(1回目)
認定日にハローワークへ行き、求職活動の状況を申告するなどの手続きを行うことで、職業に就くことができないことの認定を受けます。
- STEP6認定後1週間で給付
- STEP7以降、毎月(4週間に1回)の失業認定と給付の繰り返し
再就職または給付期限修了まで認定と給付を繰り返します。
注意したい点は、退職理由によって失業手当の受給開始時期が異なることです。
具体的には次のような違いがあります。
- 会社都合による退職
→7日間の待機期間後に給付対象 - 自己都合による退職
→7日間の待機期間 + 2ヶ月の給付制限期間後から給付対象
ただし、自己都合であっても正当な理由が認められる場合はこの限りではありません。

詳しくは、お近くのハローワークへお問い合わせください。
6-3. 早めに再就職が決まると「再就職手当」がもらえる
再就職手当とは、雇用保険の受給資格を満たしている人が思いのほか早く再就職先が決まった場合にもらえる手当のことです。
ハローワークが離職者に早く安定した職業について就いてもらうために設けた制度で、別名「ハローワーク就職祝い金」とも呼ばれています。
支給を受けるためには、次の9つの条件を全て満たす必要があります。
- 受給手続き後、7日間の待期期間満了後に就職、又は事業を開始したこと。
- 基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あること。
- 離職前の事業所、また離職前の事業所と密接な関わり合いがない事業所に再就職したものでないこと。
- 受給資格に係る離職理由により給付制限がある方は、待期期間満了後1か月の期間内は、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介によって就職したものであること。
- 1年を超えて勤務することが確実であること。
- 原則として、雇用保険の被保険者になっていること。
- 過去3年以内の就職について、再就職手当又は常用就職支度手当の支給を受けていないこと。
- 受給資格決定前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと。
- 再就職手当の支給決定の日までに離職していないこと。
再就職手当の額は、次の計算式で計算されます。
所定給付日数の支給残日数 × 50%(又は70%)×基本手当日額 = 再就職手当
30歳未満 | 6,760円 |
30歳以上45歳未満 | 7,510円 |
45歳以上60歳未満 | 8,265円 |
60歳以上65歳未満 | 7,096円 |
注)令和3年8月1日現在の額
50%なのか70%なのかは、支給残日数によって決まります。
そのため、早く就職したほうがより給付が大きくなる仕組みになっています。
基本手当日額には上限があり、60歳以上65歳未満は7,096円(2021年8月1日現在)です。
7. 住民税や所得税などの税金について
勤めていたときに給料から天引きされていた住民税や所得税は、退職すると自分で納めたり別途手続きが必要になる場合があります。
まずは住民税と所得税の違いを理解し、自分がどのケースに当てはまるか確認してください。
7-1. 住民税の支払い
住民税は、前年(1~12月)の所得に応じて計算され、翌年の6月から翌々年の5月にかけて支払う税金(市民税・県民税)です。
在職中は月々の給与から天引き(特別徴収)されますが、退職すると翌年の5月までの残金を次の3つのいずれかの方法で支払う必要があります。
- 役所から送られてくる納付書で分割納付する
- 退職する職場の最終給与から残金を一括天引きする
- 転職先の職場から給与天引きする
どの方法で納めるかは退職時期によって異なりますので、ケース別に見ていきましょう。
①役所から送られてくる納付書で分割納付する
退職日が6/1~12/31の場合は、納付書による納付(普通徴収)に切り替わり、自分で納付する必要があります。
普通徴収の各々の納期限は市区町村によって異なりますが、6月、8月、10月、翌年1月の4回に分けて納めるのが一般的です。
②退職する職場の最終給与から残金を一括天引きする
退職日が1/1~5/31の場合は、5月までの残りの住民税を退職時の給料から一括天引きされます。
ただし、一括天引きする住民税が給料より高い場合は、納付書による納付(普通徴収)に切り替わります。
市区町村から納付書が届きますので、期日までに自分で納付することになります。
③転職先の職場から給与天引きする
「給与所得者異動届出書」を職場経由で市区町村に提出すれば、転職先の給与から天引する「特別徴収」を継続することができます。
ただし、退職してから転職まで期間がある場合や、職場で手続きのお願いができない場合は、①または②による納付になります。
7-2. 所得税の支払い
所得税は、その年(1~12月)の所得に応じて計算され、その年に支払う税金(国税)のことです。
所得税の源泉徴収とは、納税者本人に代わって給与や報酬の支払者が所得税を給与から徴収することをいいます。
退職後に失業期間が発生し前年に比べて所得が減少すると、所得税が余分に源泉徴収された状態になりますので、手続きすることで余剰分を返してもらうことができます。
この手続きは、次の2つのケースで方法が異なります。
- 年内に転職した場合
- 年内に転職しなかった場合、年内に転職したが年末調整に間に合わなかった場合
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①年内に転職した場合
転職先の12月の年末調整で所得税の過不足を精算できますので、自分で手続きをする必要はありません。
給与担当部署に前職分の源泉徴収票や控除証明書(生命保険、地震保険、個人年金などの支払証明書)を提出してください。
②年内に転職しなかった場合、年内に転職したが年末調整に間に合わなかった場合
こちらのケースでは、自分で精算手続きする必要があります。
翌年2月初旬から3月15日までに、お近くの税務署か居住地の市区町村で確定申告を行ってください。
確定申告に必要のものは次のとおりです。
確定申告に必要なものは、申告内容によって異なります。

確定申告書を自分で作成できない方は、申告期間中に税務署や市区町村で行われている申告相談をご利用ください。
8. まとめ
退職をするとなると様々な事に対して対応が必要ですが、返却や受け取るべき書類について知っておけばそんなに難しいことはありません。
時期やタイミングによって受けられる制度も変わってきますので、ケースバイケースで対応しましょう。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
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